医薬品は見た目や味だけで、その中身や品質を判断することはできません。そのため、開発段階において医薬品の特性に応じた規格を設定し、市場出荷前にその規格を満たしているかを確認します。
分析研究職は、これらの規格設定や評価方法の確立に関わる業務を担当します。
分析研究の仕事内容
分析研究は製剤開発の一部であり、製剤研究やプロセス研究が製造方法の検討を担うのに対し、分析研究職は試験方法の開発や安定性評価など、分析に関わる業務を担当します。
商用フェーズに入ると製品は工場へ移管され、製造部門と品質部門(QC)に役割が分かれますが、開発段階ではこれらの機能が一体となってプロジェクトを進めます。そのため、就職活動においては分析研究職が製剤研究職の一部として募集されるケースも多く見られます。
分析研究の業務
分析法開発
製剤の特性に応じて必要な試験項目を設定し、それらを正確に評価するための分析方法を開発します。過去の知見や社内ノウハウを活用しながら検討を進めます。
分析法バリデーション
開発した分析方法が信頼できるものであることを確認するため、再現性や精度などの評価を行います。分析者や機器が異なっても同様の結果が得られることを目的に、ICHガイドラインに基づいて特異性・真度・精度・直線性などの項目を実施します。
安定性試験
医薬品を一定の温度や湿度条件下で保管し、時間の経過に伴う品質変化を評価します。得られたデータは、有効期限や保存条件の設定に活用されます。
技術移管
開発段階で確立した分析法を、工場のQC部門へ引き継ぎます。設備や環境の違いにより想定通りの結果が得られない場合もあるため、原因を調査し、安定して試験が実施できる状態に整えます。
申請書作成
医薬品の承認申請に向けて、分析に関するデータや試験方法をCTD形式に沿ってまとめます。また、申請後には規制当局からの照会に対して、分析の専門家として対応します。
分析研究職の先輩社員によるインタビュー記事
- 中外製薬 分析・物性研究
https://mypage.3010.i-webs.jp/chugai-pharm2027/contents/laboratories_op/division_ptd/sec_atr.html - 塩野義製薬 研究技術職(分析)
https://www.shionogi.com/star/jp/ja/business/employee/0213.html - 大鵬薬品 製薬技術本部
https://www.taiho.co.jp/recruit/people/content/interview_5.html - あすか製薬 CMC研究職
https://www.aska-pharma.co.jp/aska_recruit/portrait/fac_02.html
分析研究職のキャリアパス
初期キャリア(新卒~5年目程度)
入社後は、安定性試験や分析法バリデーションといった実務を担当し、分析機器の操作やデータの取り扱いなど基礎的なスキルを身につけます。先輩社員の指導のもとで業務を進めながら、医薬品開発における分析の役割や考え方を学びます。
身につくスキル・求められるスキル
- HPLC、LC-MSなどの分析機器の操作スキル
- データの正確な取り扱い・記録力
- GMPや基本的な分析知識
中堅キャリア(5~10年程度)
分析法バリデーションや安定性試験などをプロジェクトの担当者として主体的に進める立場になり、これまでの経験をもとにデータの妥当性や分析条件の判断も求められるようになります。また、他部門との調整や技術移管の主導など、チームの中核としての役割を担うことが増えていきます。
身につくスキル・求められるスキル
- トラブルシューティング能力
- データの解釈・判断力
- 部門間調整・コミュニケーション能力
シニアキャリア(10年~)
さらにキャリアが進むと、分析戦略の立案や複数プロジェクトの統括など、より上流の意思決定に関わるポジションへと進みます。また、CMC全体のマネジメントや薬事(CMC)などへのキャリア展開も可能で、専門性を活かして幅広い分野で活躍できるようになります。
身につくスキル・求められるスキル
- プロジェクトマネジメント能力
- 規制対応(CTD・当局対応)の知識
- 組織視点での意思決定力
まとめ
分析研究職は、医薬品の品質を保証するための「規格」や「試験方法」を確立する職種であり、医薬品開発において欠かせない役割を担っています。製剤研究やプロセス研究が製造方法を検討するのに対し、分析研究はその品質を科学的に証明する立場にあります。
また、技術移管や申請対応などを通じて、複数の部門と連携しながら業務を進める点も特徴です。そのため、実務経験を通じて試験方法や機器の操作を学び、他部門の関わり方を知ることで、品質保証部門や薬事部門などを目指すことも可能なキャリアとなっています。